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10年もった歯を今振り返って

久しぶりに来院された患者さんです。

 

「時々腫れて痛みがあったりもしたのですが、何とか今まで大丈夫で使っていました」と言って来られました。

 

拝見すると歯はグラグラで歯根が破折しているようにも見受けられました。当然抜歯となります。

 

実際レントゲンを見ると歯根が感染症の為に一部吸収を起こしており、抜歯止む無しの感がありました。

 

患者さんにお伺いするとつい最近までは、だましだましですが噛めていたという事でした。

 

以前のレントゲンを探してみてみるとなんとびっくり。

 

ほぼ10年前のレントゲンが出てきたのですがその所見は「近々のうちに抜歯の恐れあり」という感じのものでした。

 

患者さんもそのことは覚えておられ、当時「たぶんあまり長くはもたない恐れがある」と私が伝えていたそうです。

 

今も昔も所見は同じで、今その10年前のレントゲンを持って来られて診断しろと言われても、やはり数か月以内くらいには腫れそうで抜歯をするリスクがある状態と伝えたでしょう。

 

何を申し上げたいかと言いますと、よく歯医者は「あまり持たないようだから抜いたほうがいい」と言うそうです。

 

私はその先生に聞いてみたいのですが、何をもって「持たない」という判断になるのかを。

 

実際にこの歯の場合(かなりレアーケースですが)だれが見ても抜いたほうがいいような所見があり透過像も大きいのですが、結果的に10年持ったわけです。

 

ですから持たなそうという予見で判断するのではなく、持たないようになってから抜歯をするのでも遅くないと思います。

 

リスクだけ考えて抜歯するなら、私の日々の抜歯件数は軽く今の2倍になるでしょう。

 

とにかく歯は抜かない。

 

これが基本です。